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Tech Blog #47 クリプト業界注目イベント「Consensus 2022」レポート

更新日:2023年3月17日


6月9日〜12日に渡り、テキサス州オースティンで開催された「Consensus 2022」に参加してきたので、注目ポイントをレポートします。


Consensusは、暗号関連メディアのCoin Deskが主催するカンファレンスで、暗号通貨、Web3、DAO(分散型自律組織)、NFT(非代替トークン)、メタバースなどの関連企業や著名人が多数集まる。オースティンコンベンションセンターを中心に複数のホテルやギャラリーを会場にして、様々なトークセッションが行われた。主催者の発表では、17,000人以上が参加したという。パンデミック前に開催された Consensus 2018では、9,000人の参加者だったということから、参加人数はほぼ倍増しており、クリプト分野への注目度がうかがえる。


他のカンファレンスではあまり見かけない面白い試みとして、クリプト業界で職を求める人と企業のための人材獲得の場として「Talent Hub」が設けられていた。これは、クリプト業界がいかに成長初期にあり、多くの優秀な人材を求めているかという象徴的な試みだ。


また、ネットワーキングのために用意されて参加登録者のサイトでは、国別の参加人数が調べられるのだが、米国、カナダ、イギリスに続き、シンガポールと韓国が続いていた。このアジア2カ国はいずれもクリプト分野に積極的に取り組んでいることで知られているだけに、このような数字にも表れるものなのだと興味深かった。ちなみに日本からの参加は約90名だっだが、今後はもっと増加することを期待したい。


さて、各セッションは、暗号通貨での資産形成の話やNFTクリエイター向けの話題、ブッロクチェーンプロトコルのエコシステム、DAOの在り方、暗号規制など、多岐に渡った。


この中から、暗号通貨が今後どのように発展して行くのかという少し大きなテーマで、関連のトピックをいくつかまとめてお伝えする。また、厳選されたスタートアップによる StartupPitchコンテストに登場した企業の概要をお伝えする。


Consensus開催前から、ビットコインやEtheriumなどの主要な暗号通貨は、総じて大幅な価格下落に見舞われていた。直近では、Terra のUSTの価値がほぼゼロになってしまうような暴落劇があったり、数百億円規模のハッキングや詐欺事件が横行している。このような中で、暗号通貨が信頼に足るものとして広く普及していくのか、米国政府の規制動向など含めて、我々が期待するような未来が果たして来るのかという観点で識者の見解に注目してみた。



暗号規制に関する議論


今や無数の様々なコインやプロジェクトが出現しているが、運営母体の信頼性や詐欺的な問題への対処など多くの問題を抱えており、暗号資産への懐疑的な見方を払拭できないでいる。これに対して、米国上院の銀行委員会メンバーの議員が参加したパネルディスカッションでは、連邦政府としての明確な規制や監視の強化が必要だという見解が示され、現在議会には50を超える法案が提出されているとのことだ。


また、超党派の上院議員から提出された「責任ある金融革新法」(Responsible Financial Innovation Act)は、デジタル資産に包括的な規制を適用しようとしており、$200未満の小規模取引を非課税にし、規制の監督は証券取引委員会(SEC)ではなく、商品先物取引委員会(CFTC)に新たな権限を持たせようとしている。さらに、ステーブルコインの発行者に対する適切な準備金と保有資産の開示義務を盛り込み、消費者保護と潜在的リスクを抑制しつつ、暗号資産のイノベーションを促進したいと言っている。


バイデン政権では、2022年3月に中央銀行デジタル通貨(CBDC)の可能性を研究開発するよう求める大統領令を発表している。ステーブルコインよりもさらに踏み込んで、このCBDCの発行をいつ、どのようなルールで実現していくのかは、確実に今年の大きなトピックとして議論されることになるだろう。


CBDCについては、「誰がデジタルドルの発行権を持つべきなのか?」というパネルディスカッションで、激しい議論が繰り広げられていた。ここでは、タイトルの通り、誰が発行権を持つべきなのか? つまり、連邦準備制度理事会(FRB)がデジタルドルを発行すべきか、それとも民間企業に任せるべきなのかというそれぞれ違う意見と立場のパネリストが集まっていた。


まずその1人は、ウィラメット大学のRohan Grey教授は、ECASH法案(電子通貨・安全ハードウェア法)のアドバイザーをしている人物だ。ECASH法案では、FRBではなく財務省がデジタルドルを発行し、携帯などのデバイスにデジタル化された通貨を保存し、P2Pで直接取引できるようにするもので、銀行口座を持てないような人の利用、クレジットカード決済時のように手数料が取られないような形態を想定している。また、発行元がFRBではなく、通貨の流通に中央銀行が介在しない点でも、一般的に言われるCBDCとは異なる仕組みだ。中央集権的な管理や監視が行われないことに加え、分散台帳も使用しないため、匿名性はあるが取引履歴などの検証性もなく、単に物理的な通貨をデジタル化するという位置付けのものである。 Rohan Grey氏の主張は、デジタルドルの議論はブロックチェーンの分散技術などとは切り離し、政府認可の元で発行され、政府が安全性を確保し、政府の信用によって裏付けられた運用がなされるべきだというものだ。 民間企業は、あくまでも営利目的の事業者であり、自分達が有利になるようなロビー活動を行なったり、株主やウォール街の顔色を伺って活動するような企業には、公共財を扱うには相応しくないという見解だ。


2人目は、Circle社 のDante Disparte氏。Circle社は、暗号資産のモバイル決済プラットフォーム企業であり、ステーブルコインのUSDCを発行している。まさに民間企業でステーブルコインを発行している立場から、中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の発行はナンセンスだと言う。 CBDCを実現しているのは、世界の中でも中国のみであり、個人情報の特定や検閲が存在する通貨形態であって非民主的であると言い放った。USDCは、すでに500億ドル以上保有されており、現行の金融規制下で機能していると主張。米国の医療保険制度を例に挙げ、まともな医療サイトさえ構築できない政府にCBDCの運用などは出来ない、イノベーションは常に民間企業から起こっているのだとしている。


3人目は、暗号資産銀行 Custodia BankのCaitlin Long氏である。Custodia社は、暗号資産に関わる規制緩和に積極的なワイオミング州に本社を置く特別目的預金機関(SPDI)で、ちょうどFRBを提訴している最中であった。 提訴の理由は、連邦準備銀行システムへのアクセスを可能にするマスター口座開設の申請を行なったにも関わらず、不当に19ヶ月間も承認されずに放置されているというのである。 彼女の指摘は、FRBがドル発行の最終決定権を持っており、一部の伝統的な銀行業界のみが独占する環境を作り出していることによって、イノベーションを阻害しているという。CBDCの発行有無に関わらず、すでに複数のステーブルコインが米ドルと1対1の交換価値を提供する役割を担っており、旧来の銀行システムにこだわらず、この技術革新と新興勢力を受け入れていくべきだと強調した。


3人に共通する主張は、技術革新を受け入れず、旧来の利権を守り続けようとするFRBの姿勢に対する不満だと受け取ることができる。民間企業によって、イノベーションが起こっていくことは事実であるが、それらを安定的に発展させていくルールづくりこそが、政府に求められているということなのだろう。


Rohan Grey教授は、政府と民間企業との関係についても面白い発言をしている。民間企業のみで何か事を起こそうとしても、事業に失敗して損失がでれば、損失は国民が負担することになってしまう。社会的な責任を誰も負わない状態は望ましくない。 だからといって、政府が介在しても特定の業界だけを救済したり、民間主導で利益重視の社会性の欠如した市場を作ろうとすることは、いずれも「新世代の縁故資本主義」だと主張した。つまり、旧来の利権勢力と結びついたり、中央集権的な政府不要論など、極端な排他的思想は、自由市場の資本主義ではないということだ。大きな社会変革の原動力には、オープンソース技術を活用し、透明性のある仕組み、狭量な自己利益を超えた公共性が必要であると力強く語っていた。


CBDC発行については、世界各国の中央銀行が検討を進めており、まだまだ議論が続くものと思われるが、我々の生活やビジネスにとって極めて大きな影響を及ぼすものとして、今後も推移を注視していきたい。



Web3 Pitch Fest


第1回目となるWeb3に関わるコンペティションが企画されていた。ここでは、世界のWeb3を牽引していく革新的なプロジェクトやコミュニティに力を与えるプラットフォームを選出するという主旨で、120のプロジェクトから8つのファイナリストに絞り込まれていた。さらにそこから、上位3つのプロジェクトとワイルドカードが1つが選ばれたので、各プロジェクトの特徴を見てみよう。


Givepactは、非営利団体向けに無料で暗号資金調達するプラットフォームを提供するプロジェクトである。正直、最初は何が評価されているポイントなのかいまいち分からなかったが、よくよく考えてみると、非営利団体とWeb3の理念や社会正義に関する考え方は類似しており、DAOのガバナンスの仕組みを現行の非営利団体に適用することを想定していることに気づいた。非営利団体の多くは、寄付などにより運営されているいるが、それを現金だけでなく暗号資産でも寄付を受け入れるようにするという。さらに、組織をDAO化することで、運営者や寄付者それぞれに対して、参加する意義やインセンティブが生み出されるということだ。


例えば、寄付をするとPOAP(Proof of Attendance Protocol)というNFTトークンが発行され、非営利団体への参加や社会的貢献をした記念や証明として活動がブロックチェーン上に記録されることになる。また、寄付者には手数料などの20%が支払われ、寄付額に応じたガバナンストークンが提供されるため、非営利団体(DAO)の運営や意思決定に対して一定の権限を持つことができる。さらに、DAOの自律分散型の特性上、寄付金の使い道や収支などの透明性が増すため、詐欺的な運営をしているような非営利団体は排除されることも可能であろう。


Web3が騒がれながらも、営利目的の株式会社をDAO化するには、相当な年月が掛かるだろうと想像していたが、すでに存在する非営利団体をDAO化するという発想は盲点だった。非営利団体は一体どれぐらいの数があるのか調べてみると、全米で約154万以上、日本でも5万以上の組織が存在するようだ。現在、クラウドファンディングなどで資金を募るケースも増えてきたが、暗号資産での調達だけでなく、寄付者のインセンティブや組織運営の透明性なども含めて考えると、これまで以上に支援者の敷居を下げ、社会的にインパクトのあるプロジェクトであることに違いはない。



Deeper Networksは、ネットワークセキュリティ、ブロックチェーン、シェアリングエコノミーを融合して、グローバルなP2Pネットワークを構築することが可能な次世代(Web3)ネットワークを提供する。 最近には珍しく、Deeper Connectというハードウェアデバイスも提供している。このデバイスには、レイヤー7レベルのファイアウォール機能とVPN機能が内蔵されており、マルウェアなどのセキュリティの脅威から保護し、暗号化されたトンネル通信により、監視や検閲の回避、国を跨った際などのジオロックされたコンテンツの閲覧も可能だ。しかし、これだけでは、従来のVPNルータなどと大して違いはない。Deeper Connectは、従来のVPNとは異なり、DPN(分散型VPN)を提供する点が新しい。DPNでは、VPNプロバイダーが管理する中央集権型のサーバーなどは存在しない。DPNのデバイスは、クライアントとサーバーの両方の機能を持ち、各デバイス間のトンネル通信を自動的に確立させることが可能である。つまり、中央集権型のサーバーが存在しないことで、データの流出や検閲、ハッキングなどのリスクは低くなる。Deeper Networksのエリック・マー氏は、2014年の香港滞在時の反政府デモ(雨傘運動)下において、中国政府によるインターネットアクセスが取り締られていた経験が、製品開発に役立っていると語っていたのは印象的であった。


Deeper Networksは、次世代ネットワークと謳っているのはDPNだけはない。ブロックチェーンのメインネットワークを立ち上げ、ユーザーは自らのネットワーク帯域を提供するという貢献に応じて、マイニング報酬としてDPRトークンを得る仕組みを作り上げている。ユーザーは、未使用時のネットワーク帯域を他のユーザーに共有するだけで、受動的に報酬が得られるという訳だ。


現在、150カ国以上で約7万ノードが存在し、世界最大の分散型プライベートネットワークに育ちつつあり、2024年末までには100万ノードに達すると予測しているという。まさに、非中央集権型の安全なネットワークと個人の自由や報酬を獲得できるネットワークの民主化を実現しようとしてる。ウクライナ侵攻などの世界情勢を鑑みても、真のプライベートネットワークをが求められる状況はしばらく止まることはないでしょう。



Merkle Scienceは、シンガポールに本社を持つスタートアップで、暗号資産取引のリスク管理やインテリジェンスを提供すると共に、不正取引や詐欺などの犯罪監視、不正検知を行うプラットフォームを提供する。


暗号取引における異常行動を「行動ルールエンジン」によって、自動的に不正取引を検出する。これは、ブラックリストの監視だけでなく、疑わしい不正行為を特定し、即座に取引をブロックしたり、規制当局への適切な報告書の提出まで行うことができる。取引ルールは、各国の規制やガイダンスに応じてカスタマイズすることが可能なため、世界中の複雑な規制を遵守することになり、意図しない制裁や懲罰的な罰金を回避することにもなる。


暗号犯罪では、不正に入手した暗号資産をどのように洗浄するか、いわゆるマネーロンダリングへの対処が重要なポイントとなる。2021年に世界的なマネーロンダリング対策の監視機関である金融活動作業部会(FATF)により、暗号通貨の移動に関するトラベルルールが発表され、「発信者と受取人の情報取得、保有、提示」の義務付け、取引が犯罪に関与していると判明した場合には、適切な措置を講じられるようなった。このことから、企業はトラベルルールに準拠し、関連リスクを把握して犯罪防止に積極的に努めなければならないため、Merkle Scienceの持つプラットフォームの重要性はさらに増しそうだ。



Monaは、ワイルドカードという特別な形で選出された。ブラウザからアクセス可能なオープンなメタバース空間を構築するプラットフォームを提供する。クリエイターのために、無料で高品質なメタバース世界を構築するためのツールやインフラを提供し、クリエイターは構築した作品をNFTとして、外部のマーケットプレイスで販売することが可能となる。すでに3,000人以上のクリエイターが利用しており、写実的な建築物からアート系の3D空間、コンサートやイベント会場など、様々なスタイルの作品が存在している。


最近では、SandboxやDecentralandのような多くのメタバースプラットフォームが、仮想空間上の土地を販売するなどして人気を集めているが、Monaはこの投機的な動きを強く否定し、クリエイターにとってメリットのあるオープンなメタバース環境の構築を目指している。2021年に設立したばかりのMona自身が、どのようにマネタイズしていくのはまだ不明だが、Pitch後の6月末に新たに資金調達しており、今後の民主化されたメタバースの発展への期待が膨らみます。


いずれのスタートアップもWeb3の観点から、非常に面白い取り組みがされていると感じられた。既存にある社会課題をブロックチェーン技術を駆使して解決していこうとしている点が共通している。また、民主化と言われるように、誰もが恩恵を受けられるような社会的に意義のある事業を目指しいている点も見逃せない。



暗号資産が大暴落して冬の時代に入ったと揶揄される今だからこそ、投機的な話題は下火となり、本質的なイノベーションのみが生き残っていくような時代にいよいよ入っていくのではないかと予感させる勢いが、Consensus全体に感じられた。


今後、我々が注目すべきWeb3というテーマにおいては、非中央主権的で分散化というだけでなく、それをどう社会性の高い環境に実装し、社会課題を解決しようとしているのかという点にもっと注目していくことにしたい。


以上

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