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Tech Blog #35 セコイアキャピタルのベンチャーファンドモデル刷新は何を意味するのか?


The Sequoia Fund: Patient Capital for Building Enduring Companies

シリコンバレーが大きく成長する過程において、非常に大きな役割を果たしたのがベンチャーキャピタル(以下VC)という存在でしょう。 その中でも、黎明期に最も影響を及ぼしたのが「セコイアキャピタル」というVCです。1972年にフェアチャイルドセミコンダクター社(世界で初めて半導体集積回路を商業生産 / 後にインテル設立にも繋がる)の出身者が設立した老舗のVCで、初期のApple、Google、Cisco systems、Oracle、Yahoo、Paypalなどの名だたる企業に投資し、その成長を牽引してきた存在です。


そんなシリコンバレーを代表するセコイアキャピタルが、ベンチャーファンドモデルを大きく変えるという報道がありました。従来のファンドの考え方は、既に時代遅れだと自己否定するかのような内容からも、VC業界やスタートアップにとって何か大きな変化が起こっているのではないかと感じ、その背景や意図をまとめてみました。



10年のファンドサイクルは時代遅れ

ベンチャーキャピタルファンドとは、LP(Limited Partner)出資者から集めた数十億、数百億ドルという多額の資金で、通常10年間という償還期限のある未公開企業に投資するファンドを組成し、VCがGP(General Partner)として運用します。VCは10年という期限の中で、株式売却などで得られた利益を加えた資金をLP出資者に返却(償還)し、ファンドを解散させます。つまり、10年以内に利益を増大させるために、スタートアップ企業に早く上場するようにプレッシャーを与え続け、上場後には利益を得るために株式を売却するという仕組みです。


これは、クローズドエンド型と呼ばれるモデルで、流動性がなく10年というという期限内は、LP出資者は資金を自由に出し入れすることは出来ません。これに対して、セコイアは10年という償還期限を設定しないオープンエンド型というファンドモデルへ移行するという。


その理由として、セコイアのパートナーのRoelof Botha氏は、決済サービスのSquare社の投資例を取り上げている。

『セコイアは2011年初めにSquareに投資し、2015年に上場時には時価総額は29億ドルでした。2020年にはSquareの時価総額は860億ドルとなり、現在では1,060億ドルを超えています』

つまり、上場後も株式を売却せずに長期保有していたほうが、はるかに利益が大きくなるということを意味しています。したがって、運用期限を設定しないファンド「The Sequoia Fund」を設立し、そこから未公開企業向けの複数のサブファンドに資金提供する構成になるという。LP出資者は、2年目以降であれば、年2回自由に資産を売却できる流動性のある投資先となり、上場や買収といったタイミングに関係なく、スタートアップの成長や自らの事情に合わせた投資判断が可能となる。


※ The Sequoia Fund とサブファンドの構成イメージ


新たなVCとの競争

未上場株と上場株式市場の垣根がなくなりつつあるという話も関係があるようだ。ソフトバンクのビジョンファンドは、上場間近な企業に巨額投資して大きなリターンを得て一世を風靡した。最近では元々ヘッジファンドだったタイガーグローバルが1日に1.3件以上という驚異的なスピードで投資を行っている。ゴールドマンサックスもまたVC投資に積極的で、今や上場株式市場で活躍していた金融界の大手が未上場株市場にも参入してきているという状況だ。


一方、SPAC(特別買収目的会社)を使った上場が急増したように、未成熟なスタートアップでも短期間で上場、資金調達が容易になっている状況もある。


このような現状からすると、VCにとっては、起業家の育成なども含めて、アーリーステージから成功に導くために時間と手間を掛けて投資してきたにも関わらず、その価値が最大化する段階でその恩恵が得られないという現象が起こっているということになる。世界にイノベーションをもたらすスタートアップを支援するという高尚な目的よりも、スタートアップを単なる金融商品とみなして、上場直前に触手を伸ばしたり、安易に上場させたりする新たな競争相手と闘っていかなければならないという状況が垣間見える気がします。



登録投資顧問(RIA)になる

今回セコイアは、RIA(登録投資顧問:Registered Financial Advisors)になることも発表している。RIAは、証券取引委員会(SEC)により登録、管理されるもので、未上場株市場だけではなく、上場株市場や暗号資産取引などを含む投資アドバイスが提供できることになります。


暗号資産分野において、積極的な投資を行っているアンドリーセンホロウィッツ(Andreessen Horowitz)が、すでに2年前にRIAとなっていることから考えても、セコイアも従来のVC投資に留まらず、新たな投資分野、または投資方法に備えていくという姿勢を鮮明にしたということでしょう。



事業成長と長期投資

このようなセコイアの大きな変化の本質とは何なのか? かつてVCは偉大な起業家を見出し、リスクを伴いながらも資金だけでなく、精神面でも支援をしてきた。その結果として、優れたコミュニティや人脈を醸成していく好循環を作り出した。 しかし、現在は資金調達先の選択肢も豊富になり、過去の成功ノウハウや情報はネット上に溢れ、必ずしも優れたメンターがいないとスタートアップは成長できないとは限りません。未上場のままユニコーン企業(評価額100億ドル)と言われるまでに価値を高められ、かつての伝統的なVCの役割は薄れてきたのかもしれません。 そもそも、スタートアップの成長の時間軸とファンドの投資期限は無関係であり、期限内に上場するようプレッシャーを与え続けられる状況は健全ではなかったのではないでしょうか。未上場や上場に関係なく、長期投資を前提として事業成長を支援し、適切なタイミングでその企業価値を最大化させることが本来のあるべき姿だとすれば、その本質に向かっているのかもしれません。


米国では、LTSE(ロングターム証券取引所)という短期売買をせずに長期保有を前提とし、保有期間に応じた決議権を持つような取引所が存在しており、最近AsanaTwilloという2社がここに上場しました。サステナビリティの観点からも、短期的な株価に一喜一憂せずに長期的な視点で、ビジネスの本質を見極め、本当の企業価値を創造していく世界を多くの人たちが潜在的に求めているのではないでしょうか。


いずれにしろ、まもなく設立50年を迎えようとするシリコンバレーを代表する伝統的なVCの大きな変化は、投資家やスタートアップ、VC業界全体に影響を及ぼしていく可能性があり、今後の動向にも注目していきたいと思います。


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