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Tech Blog #48 電動垂直離着陸機(eVTOL)のエアタクシー事業の離陸は間近か?

更新日:2023年3月17日


Credit: Joby Aviation

最近、空飛ぶタクシーとして注目を集めていた 電動垂直離着陸機(eVTOL)の商業運航が近いのではないかと思わせるニュースが続いていたので、実用化に向けた現状の動向を調べてみた。


アメリカン航空は、Vertical Aerospace社に対して、最大250機、追加100機のオプション条件付きで、電動垂直離着陸機(eVTOL)50機の納入前支払いを約束。アメリカン航空は1年前同社に2,500万ドルを出資している。

Credit: Vertical Aerospace

ユナイテッド航空は、Archer Aviation社の空飛ぶタクシーを最大200台購入する仮契約を締結し、1,000万ドルの納入前保証金を支払った。

Credit: ARCHER AVIATION

電動垂直離着陸機(eVTOL)は、ヘリコプターのように垂直離着陸が可能で、都市部の比較的短距離を飛行することを想定している。電気を動力源とするため、従来の航空機と比べて二酸化炭素排出量を削減できるというメリットもある。4人乗りというサイズ感も踏まえて、空飛ぶタクシーを呼ばれる。



AAM(Advanced Air Mobility)市場


デロイトは、eVTOLを含むAAM(Advanced Air Mobility:先進的な航空モビリティ)の市場は、2035年までに1,150億ドルに達し、28万人以上の雇用を生み出すと予測している。1

すでに世界では、200社以上がeVTOLを開発しており、12以上のプロジェクトが多額の投資を受けており、2020年9月時点でこれらの開発に20億ドル以上が投資されているという。

さらに、モルガン・スタンレー・リサーチによれば、軍事や貨物用途のドローンなども含めた自律型航空機の市場規模は、2040年までに1.5兆ドルに達すると予測している。2


Urban Air Mobility Global Total Addressable Market (Base Case) Source: Morgan Stanley Research


エアタクシー事業の開始はいつ?


その中でもJoby Aviation社は、米国でいち早く乗客を乗せたeVTOLの商業化を目指しており、2024年までにエアタクシーサービスを開始する予定である。同社の機体は、最大150マイル(240km)の距離を最高速度200マイル(320km)で運航することを計画。トヨタ自動車から出資を受け、製造技術において協業していくことで提携している。


Joby Aviation社は、2020年から米国防省と契約している アジリティ・プログラム(米軍と協力して商用eVTOL産業の加速を目的とするプログラム)にて、米軍の耐空証明を取得している。この8月に契約が増額・拡大され、契約総額は7,500万ドル以上になったと発表。この契約には、新たに海兵隊が加わり、物資補給、緊急医療対応、人員搬送など、非戦闘用途での利用を想定しているという。 また、NASAが実施している Advanced Air Mobilityプログラムの一環として、離着陸や飛行時の騒音データのテストをクリアし、米国連邦航空局(FAA)の認証を一部取得している。

Credit: Joby Aviation


商業運航に必要な認証


eVTOLの商業運航においては、主に3つのFAAの認証が必要になる。Joby Aviation社が取得した認証の1つは、eVTOLのエアタクシー事業を許可する Part 135 Air Carrier Certificate「航空運送事業および運航者証明書」であり、飛行そのものが許可された訳ではない。飛行するためには、eVTOLとその構成部品の安全性を証明する「型式証明書」と、承認された仕様の機体の量産を許可する「生産証明書」の取得が必要になる。


eVTOLの型式証明は、従来の民間旅客機と同じPart23という規定が適用されるとしていたが、FAAは今年5月になって、垂直に離着陸できることを考慮して、軽飛行機とヘリコプターの中間に位置する特殊なクラス「パワーリフト」と定義し、連邦航空規則 Part21.17(b)という特別な規定で認証する方針へ変更するなど、全く新しい航空機に対して少々混乱が生じているようだ。


さらに、都市部でeVTOLが飛行するとなると新たな運航規則が必要となるため、FAAは、既存のリコプターと航空機の両方のルールを取り込んだ 特別連邦航空規則(SFAR)の公開を2022年末までに進めている。しかし、これまで新しい規則を作るには10年ぐらい掛かっていたと言われ、今までにないスピード感でルールを作っていく必要がありそうだ。Joby Aviation社が目指す2024年のサービス開始に間に合うような進捗が期待される。



安全性と航空交通管制


いずれにしろ、安全基準などについては妥協は許されない。人や車が密集する都市部で墜落事故などが発生すれば、その被害は大きなものになると容易に想像できる。 実際、eVTOLのテスト飛行時の事故も複数報告されている。ソフトウェアの不具合で制御不能やコンピュータの誤動作でエンジン停止するなどして、墜落事故が発生している。バッテリーを搭載していることから過熱などから火災が発生した例もあるようだ。しかし、あくまでもテスト段階での不具合や事故であり、死亡事故などの致命的な問題を抱えている訳ではないことから、前向きな技術発展の過程だと捉えるべきであろう。



A Pyka Inc. Pelican, a pilotless electric drone for crop dusting, crashed May 14 near Winters, California.(Source: NTSB)

なお、従来の航空機の型式証明と同レベルの安全認証が必須となるが、eVTOLは動力源のエネルギーから飛行原理まで従来の航空機とは大きく異なる。さらに自律飛行や自動化などを想定すれば、AIや複雑なソフトウェア部分の認証プロセスがかなり重要になってくるはずだ。従来の安全評価や分析手法、シミュレーションに変わる新たなアプローチが必要とされるだけに、開発をしているスタートアップだけでなく、FAAやNASAなどの規制当局側の対応力が試されている。


さらに安全性を確保するには、機体性能などばかりではない。旅客用eVTOLだけでなく、貨物用の無人または遠隔操作のドローンなどが無数に飛び回る未来を想像すると、その空域全体の安全を確保するための航空交通管制が必要になってくることが考えられる。 これには、NASAが航空交通管理システム Air Traffic Management eXploration (ATM-X)プロジェクトを推進しているとのことだ。これは、従来の民間航空機から新興の宅配ドローンや都市型エアタクシーに至るまで、両方の機動性と効率的で安全な運航を実現するための統合航空管制システムで、すでに2015年頃から始まった無人ドローンの飛行管理を中心とした 無人航空機システム交通管理(UTM)の研究成果を活かし、2045年時点の空域を想定した研究開発を進めている。2020年にフェーズ1の需要管理や優先課題の調査分析を完了させており、現在はフェーズ2の段階で、主要な技術開発やシミュレーションが行われている。


ATM-X には、クラウドやより高速なコンピューティング性能、大容量データ処理ができる通信システムなど、様々なIT技術が必要とされる。 シリコンバレーにあるNASAのエイムズ研究センターが、ATM-Xプロジェクトにおいて重要な役割を果たしているということを考えると、最近Googleがエイムズ研究センターと提携し、施設内にオフィスや研究開発施設を建設する計画をしていることも、少なからず関連性がありそうだ。3



eVTOLが飛び交う未来


さて、eVTOLの商業運航は果たしていつ頃になるのかという疑問に対して、Joby Aviation社が目指す2024年には、一部の限定地域や航路だとしても十分に実現できそうな気がしてきた。デロイトのAAM市場の発展予測でも、2025年にはいくつかの都市で商業運航が開始されると予測している。2034年頃には、ある程度の複雑かつ密度のある運航がいくつかの都市で開始されていることが期待されている。

Source: Deloitte and AlA analysis and estimates based on our 2021 Advanced Air Mobility Survey.

eVTOLが空飛ぶタクシーと呼ばれたとしても、バックトゥー・ザ・フューチャーやブレードランナーに出てくるような空飛ぶクルマとは、見た目も飛行動力源も大きく異なる。SFと同じようにはいかないまでも、気軽に空を移動する日は近い。


パンデミックにより、2020年以降リモートワークが可能になったため、郊外に引っ越した人たちは全米で490万人にも上る。オフィスが再開され、出社を余儀なくされた人たちは、新たなスーパコミューター(片道90分以上かけて通勤する労働者)4 となった。そんな人たちも毎日通勤する訳ではない、週に2-3日だったり、または月に数回オフィスや客先へ出向くだけだったりする。


カリフォルニア州を中心に定額の通勤飛行機サービスを展開している Surf Airは、毎月33%のトラフィックが増加しているとのことだ。5 この状況からから考えても、エアタクシーの需要は今後も高まる可能性がある。エアタクシーが普及すれば、ますますオフィスの近くや都市部に住む必要性は少なくなるかもしれない。

パンデミックが切っ掛けとなり、働き方や住居などの生活スタイルそのものが変わったことは明らかだが、さらに新たな交通手段の変革は、都市設計の在り方まで変えるだろう。

かつて、Uberなどのライドシェアタクシーが登場した際には、空港の駐車場利用は激減し、新たに建設されるショッピングモールやアパートなどの駐車場スペースは削減される設計になったという。eVTOLを広く普及するためには、充電設備や乗客の待合室などを備えた離着陸場所となるインフラ整備が必要となる。駐車場スペースを削減してエアタクシー・ステーションを作るショッピングモールなどが出てきてもおかしくない。


eVTOLの登場は、新しい交通手段の提供だけでなく、我々の生活スタイルや都市の在り方にまで影響を与える可能性を秘めていると考えると、今後さらに注目していきたい分野である。



1 Advanced air mobility Can the United States afford to lose the race?https://www2.deloitte.com/us/en/insights/industry/aerospace-defense/advanced-air-mobility.html

2 Are Flying Cars Preparing for Takeoff? https://www.morganstanley.com/ideas/autonomous-aircraft

4 スーパーコミューターの爆発的増加から学ぶ、持続可能な成長のためにhttps://www.apartmentlist.com/research/explosion-of-super-commuters-offers-lessons-for-sustainable-growth


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